【なぜ】南加賀土木総合事務所
建設業者がイベント費支払い
北陸朝日放送 2019年03月22日
下田武史アナウンサー: 県が発注した公共工事において、工事とは直接関係のない民間団体主催のイベント費用が工事費から支払われていた問題について、県警・司法担当の米田記者の解説でお伝えしていきます。
米田宏行記者: よろしくお願います。まず、このニュースについてなんですけども、舞台になったのは粟津温泉のメインストリート、粟津街なか線です。無電柱化など温泉街の景観を美しく保ちましょうということで、10年以上かけて去年ようやく完成したんですけども、誘客の起爆剤になればということで地元も喜びました。
下田アナ: その中で明るみになった今回の問題ですね。
米田記者: そうですね。概要を時系列にまとめてみました。皆さんも、おやと思うことがあるかもしれません。去年の5月、県が発注した小松市粟津町にある県道・粟津街なか線の補修工事を小松市内の建設業者が落札します。その直後、土木事務所の工事担当職員から落札した業者に対して「この費用の中には粟津街なか線完成を祝う会という民間団体主催の式典費用120万円も含まれています」と。
下田アナ: 後から。
米田記者: ええ。もちろん契約書には、そういう項目はありません。業者は疑問に思いながらも全工事費およそ1100万円のうち、前受金として受け取ることができる4割の440万円を受け取って、そこから式典の費用を払おうということにします。
米田記者: 去年8月23日に式典は ── 粟津温泉1300年祭 ── これも毎年行われている、おっしょべ祭り ── これが同時開催されている中、スケジュールを縫うようにして40分ほど粟津温泉街区まちなみ協議会という民間団体主催で、知事や県議会議員を招いて開かれたということなんです。そして翌9月、式典の費用をまとめた請求書を南加賀土木総合事務所の職員から建設業者が受け取ります。この時、式典にかかった費用は当初組み込まれていた120万円ではなくて、その倍以上の税込み262万円でした。
下田アナ: 増えましたね。
米田記者: ええ。建設業者は式典費用が赤字になったことを土木事務所の担当者に相談しますと「工場を足します」ということで、総額90万円ほどの追加工事を発注します。
米田記者: 結局、去年末に工事は完了するんですが、式典費用の赤字分を補填するために増やした工事に関して契約の変更をしなきゃいけないということで、今年に入ってから土木事務所と建設業者の間で工事金額の調整が2月の中頃ぐらいまで行われたということなんです。
米田記者: これを不審に思った建設業者が福井県の市民団体に相談をします。で、先月26日に市民団体の男性を告発人として、南加賀土木総合事務所職員2人に対して、業者に支払いを強要した、税金を不必要に使った背任の容疑で告発状を提出しました。最終的に建設業者へ変更した契約書が送られたのが3月の6日でした。この時に初めて式典費用242万円、税込みで262万円が計上されたと。ここで契約書なんですが、この日付を「去年の12月3日にするように」と南加賀土木総合事務所は建設業者に言ったということで、お二人は、この内容を聞いてどうですか?
恩田琴江アナウンサー: いくつか思うんですけども、いまモニターの一番上に一瞬出ていた、去年5月の段階で式典費用が落札した後に、わざわざ費用にまた組み込まれるっていうのは、これは当たり前なんですか?
米田記者: 実際にあった、っていうことなんでしょうね。
下田アナ: そして、式典費用が赤字になったからといって簡単に工事を足すことができるのかという疑問もありますし、その日付を去年にする必要があったのかという、本当にいろいろ疑問が湧いてくるのですね。
米田記者: そうですね。まず、その式典費用が組み込まれていたことについて、南加賀土木総合事務所への取材で「100万円を超える式典などは県が主催になった場合は入札を行わなきゃいけない」と。「そこで、式典を仕切る業者を決めなければいけないということで、そんな時間がなかった」と。「で、多少アブノーマルなやりとりではあったが問題はない」と。「とにかく地元の熱意に応えたかった」ということなんですね。
下田アナ: 地元の熱意 ── そこまでして式典を開催しなければならなかったのかなと感じますよね。
米田記者: そうですね。こういった南加賀土木総合事務所の言い分に対して知事も、このように答えています。
谷本正憲 石川県知事: 国のマニュアルでは、それを含んだ形で請負契約を締結しても、なんかいいようですから、臨時・異例ではありますけれども、そういう措置を取ったっていうことですから、その時の状況を考えれば、やむを得ない部分もあったのではないかっていう思いがしますが、いずれにしても基本は、工事請負契約と完成のための式典の開催経費とはね、別途に分けて本来は契約すべきだったっていうふうに思いますけどもね。それでは少し、それのところの配慮に欠けてたって部分はあったのかもしれませんね。
米田記者: 知事の話にもありました国のマニュアルっていうのは、国土交通省の通達に当たるんですけども、これによりますと請け負った金額の30パーセント以内であれば契約を途中で変更することに制限はないと。あらためて入札をかけて別の工事を発注するということはしなくてもいいというふうに言われています。実際今回の追加工事を含めた総工事費というのが1200万円。このうちの式典費は262万円。だいたい2割ぐらいですね。
下田アナ: 2割ちょっとですね。
米田記者: ええ。この2割ちょっとなんですが、一応セーフということになるんですけども、ただ、あくまでこれは工事に関して、工事に関連することでのルールなんです。中身で言うと式典なので別のものになるというふうに解釈すべきところだとは思うんですね。このように自由な解釈で支出を認めてしまうというようなことになりますと入札制度本来の透明性の確保ですとか、コストパフォーマンスの高い公共事業を行うという入札制度の本来の目的を果たすことはできません。業者も「立場は弱く、言われるがまま払ってしまった」と。「こんなおかしな公共工事は初めて」ということで違和感を覚えているということですね。
下田アナ: そうですよね。工事費以外の費用を出せと言われたら、やっぱり普通おかしいと思いますよね。そして、そもそも工事を簡単に増やしたりしていますけども、この原資っていうのは税金ですよね。
米田記者: そうですね。式典費用の赤字部分への補填、つまり工事を足すということなんですが、具体的には工事中は、特に道路なんかですと、仮設で皆さん利用できるように鉄板を引いたりすると思うんですが、この鉄板が大きさでいうと300平米ぐらいは最初計上されてたんですね。これを借りる賃料も計上されていたんですが、実際の工事では使われなかったんです。これを、必要のないものを使ったという、この計上する行為はどうなのか。それと工事の変更を行ったというこの契約書の日付ですね。なぜ12月3日にしなければいけなかったのか、ということは今後の取材の中で改めて後日お伝えできればというふうに思います。
下田アナ: 私たちメディアも県民も公共工事にもっと関心を持って、大切な税金が適切に使われているかちゃんとチェックしていくことが大切だと思います。
出典
https://www.youtube.com/watch?v=z6Nz-EtHqPw