<迷走の果てに 福井信金・武生信金合併>(中) 融資規模の差
CHUNICHI Web(中日新聞) 2016年02月18日
「合併は単なる規模の拡大を求めるのではなく、将来にわたり地元への貢献を果たしていくためのもの」。合併当日の十五日、新しい福井信金は報道機関向けのリリースで、そう強調した。昨年五月の合併会見で高橋俊郎理事長は「規模の拡大が見込める」と合併の意義を説明していた。微妙な修正に、小規模事業者からは戸惑いの声も漏れる。
合併前から旧武生信金を利用する越前市内の小売業男性(59)は「合併は生き残りのため当然」と受け止める一方で「ここは小さな会社がたくさんある地域。金融機関は雨が降れば傘を取り上げると言われるが、地元のためにという信金の役割はきちんと押さえてほしい」と注文する。
「これからも、きめ細かなサービスや取引をしてもらえるのか。本当に切り捨てられないだろうかという不安の声があるのは間違いない」と語るのは、武生商工会議所の西藤浩一専務理事。「武生信金と福井信金とでは、融資のハードルの高さは違うだろう。不安を払拭(ふっしょく)してもらいたい」と願う。
合併を機に、福井信金は越前市と池田町の計十二店舗で「ブロック制」を導入した。旧武生信金本店に設けた武生営業部に本部長やブロック長を置き、ブロック長に融資の決裁権限を与えるなどして、緩やかな運営の一体化を図る。「急に融資の方針などを変えると、顧客も職員も不安になる。しかし、武生だけ緩めるわけにはいかない。段階的に体制を整える」と担当者は話す。
しかし、信用調査会社の関係者は「武生信金は福井信金の目線で見て、相当甘い部分があった。顧客の見直しや貸しはがしが実行される可能性はある」と指摘。「合併直後に事を起こせば悪い評判が先行する。当面は地域経済に大きな影響は出ないだろう」との見方を示しながらも「来年四月の消費税の再増税以降どうなるか」と動向を注視する。
合併で、県内の信金は福井、越前、敦賀、小浜の四つとなった。中でも、福井信金は合併した十五日現在で預金量が八千十五億円、貸出金残高は三千九百二十一億円と突出し、日本海側にある信金では最大規模を誇る。規模のメリットを生かし、成長が見込める産業への支援や関与を強めていく方針だ。
「現場では福井信金を競争相手として、さらに意識するようになった」。県内にある銀行の関係者は競争の激化を予感する。人口減少は止まらない。低金利の下でも資金需要は高まらず、さらなる利下げ競争で利ざやの減少を招きかねない。この関係者は「パイの奪い合いだけでは経営体力を消耗する。互いに付加価値を高めたサービスで前向きな競争ができれば地域活性化にも、いい影響が出る」と話す。
生き残りを懸けた競争が厳しさを増す中、信金の基盤が地域にあることは変わらない。
県立大地域経済研究所の南保勝教授は「地域密着型金融として、どう役割を果たすかによって、合併の真価が問われる」と強調する。
出典
- http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20160218/CK2016021802000028.html {wm}
- 〈迷走の果てに 武生信金 福井信金 合併〉中「中融資規模の差 不安募る小売業者」『中日新聞』2016年02月18日、朝刊、福井版、18面
備考
画像は「Silmaril Necktie 」より転載した。
括弧・略号
{ } アーカイブ
wm Wayback Machine