<迷走の果てに 福井信金・武生信金合併>(下) 訴訟団長の目
CHUNICHI Web(中日新聞) 2016年02月19日 05時00分
今回の合併は事実上、福井信用金庫による旧武生信用金庫の救済合併だった。不正融資を追及してきた旧武生信金会員代表訴訟団の村内光晴団長(48)に、合併に対する思いを聞いた。
-今回の合併には賛成か、反対か。
「両面あると思う。抱えている問題を、全部明らかにしてから合併するのが筋だ。一方で、四年連続赤字で収益改善の見込みはなかった。一歩一歩破綻に向かっていたのは事実で、どこかで合併せざるを得なかっただろう」
-合併で不利益を被るのは。
「破綻を免れたため、預金者にはダメージがない。融資を受ける人には、審査が厳しくなることがあるかもしれない。何より、一番の犠牲者は職員だ。何も説明がないまま、職場が変わることになる。福井信金から、お荷物扱いされることも考えられる」
-不正融資問題の追及が、合併の引き金をひいたことになる。
「『悪いことをしたらいけない』というのは、子どものころから教えられていること。正しいことをしたと胸を張って言える。預金者や出資者にとっても、合併が遅れれば遅れるほど路頭に迷う恐れが増していた。信金だけでなく、周囲の傷も深くなっていたと思う」
-事実上の「救済合併」を決めた福井信金の判断は。
「スケールメリットを選んだのだろう。その先の金融再編も視野に入れているのかもしれない。しかし、リスクも抱え込んでしまった。武生信金は、不正融資問題で、随分預金者を減らした。説明責任を果たして預金者の不信を解消しない限り、同じリスクは福井信金も負うことになる」
-一連の問題を追及する中で得たものは。
「行政や金融機関、報道など、すべてが国のシステムに組み込まれていることを知った。参院財政金融委員会で、大門実紀史委員(共産)も『シリーズで追及する』と言っておきながら、質問を途中放棄した。それどころか、何度も何度も旧武生信金との和解を迫ってきた。金融庁と国会議員も、裏でつながっているのか、とがくぜんとすることもあった」
-新しい福井信金に期待することは。
「武生信金の預金は、福井銀や北陸銀などに流れたと聞いている。今の地銀は、かつての信金のように中小への融資に力を入れている。今のままでは信金は食われてしまうだろう。預金者の信用や安心を得られる金融機関になってもらいたい。第一歩が、旧武生信金の一連の問題を明らかにして、責任の所在をはっきりさせることだと思う」
(この連載は、布施谷航、平野誠也、中場賢一が担当しました)
出典
- http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20160219/CK2016021902000007.html {wm}
- 〈迷走の果てに 武生信金 福井信金 合併〉下「訴訟団長の目 一連の問題 説明を」『中日新聞』2016年02月19日、朝刊、福井版、18面
備考
記事の発表時刻は「Silmaril Necktie 」を参照した。
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