<迷走の果てに 福井信金・武生信金合併>(上) 事実上の救済
CHUNICHI Web(中日新聞) 2016年02月17日 05時00分
北陸財務局が合併を認可する前日の今月三日、福井信用金庫の担当者が中日新聞福井支社を訪れた。「合併後は『旧武生信用金庫(現福井信用金庫)』と表記してもらいたい」。「一連の不正融資問題は福井信金ではなく、武生信金が抱えている問題」と突き放すような姿勢だ。一方で「今後も、この問題と付き合わざるを得ない」という割り切った思いも透けて見える。
越前市の酒造会社「寿喜娘(すきむすめ)酒造」(昨年三月倒産)に対する不正融資に端を発した「武生信金問題」は一向に収束する気配にない。
二人の元理事長らによる背任容疑は福井地検が不起訴処分とした。しかし、信金側が元理事長に対して損害賠償を求めている民事訴訟はいまだ継続している。さらに、不正融資を明らかにした元職員が職場復帰を求めて訴えている地位確認訴訟も抱えている。
三月に判決が出る見通しだが、その内容次第では、控訴の可能性も否定できない。
寿喜娘酒造以外の不正融資も、昨年末に明らかになった。当時の常務理事は「迂回(うかい)融資で支援する」と不正な手法での融資を約束。取り決めの場には、旧武生信金で最後まで理事を務めていた人物も出席していたとされる。旧武生信金が抱えている一連の訴訟は合併とともに消えるわけではない。そのまま、福井信金が引き継ぐことになる。
訴訟だけではなく、組織上の課題も残る。二〇〇一年四月に福井信金、福井中央信金、鯖江信金が合併して形成された福井信金。合併から十五年たつ今でも、出身信金ごとの派閥があるという。
関係者によると、合併後に間もなく、ある支店では一人だけ出身金庫が違う職員が配置された。この職員は職場環境に耐えられず、辞めていったという。出身金庫ごとの仲間意識は根強く「人減らしのためにこうした手法が使われることもあった」と関係者は明かす。問題を抱え、事実上救済された武生信金。毎週土曜日に研修を受け、福井信金との組織統合に備えてきたが、旧武生信金の職員からは懸念の声も上がる。
預金量八千十五億円、貸出金三千九百二十一億円の日本海側では最大規模のメガ信金。大きな課題は預金者、融資先への影響だ。事実上の「救済合併」で、二つの顔を持つ新福井信金は地域に、どのような影響を与えるのか。期待と不安、厳しさと温かさ。さまざまな思いの込められたまなざしが、注がれている。
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福井信用金庫が武生信用金庫を救済合併する新しい「福井信用金庫」が十五日、発足した。課題と今後の行方を探る。
出典
- http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20160217/CK2016021702000022.html {wm}
- 〈迷走の果てに 武生信金 福井信金 合併〉上「事実上の救済 組織内融和に懸念」『中日新聞』2016年02月17日、朝刊、福井版、22面
備考
記事の発表時刻は「Silmaril Necktie 」を参照した。
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