『日本刀時代』につけ込む刀劍僞造團捕はる
鑑定家本阿彌光美も一役
大阪毎日新聞 1935年03月13日
警視廳捜査第二課の一森警部は既報のごとく刀劍鑑定家として有名な東京市四谷區坂町本阿彌光美こと楢原二郎三郎(六一)を去月末から警視廳に留置し追窮してゐたが、果然大がゝりな刀劍詐欺事件が發覺した
一味は東京芝區新橋六ノ三刀劍飾職内田又男(三六)同區西久保神谷町一三刀劍商深谷重次(四三)澁谷區佐々木新町二六刀劍鍛冶職米田與三郎(四八)
の三名で滿洲事變以來軍人や好事家間に日本刀愛好熱がすばらしく盛んになつたに着目、まづ米田が一口二、三円の鈍刀を大量に作り内田がこれに「天保二年美濃介藤直胤作」あるいは「天保八年次郎太郎藤直勝作」など有名な刀匠の僞銘を刻み、さらに本阿彌光美の鑑定書、由來書または箱書を得た上、深谷が一口百円から五百円ぐらゐで滿洲、台灣、朝鮮その他全國的に賣捌いてゐたもので、すでにわかつたものだけで千數百口に上つてゐる
警視廳當局ではこれを機會に全國各地に散在する僞刀師の黑表を作り一齊檢擧に乗りだすことになつた、また本阿彌光美は事情を知つて鑑定書を書いたものであるが他にもインチキ鑑定書が多數介在してゐるのではないかと見られてゐる(東京發)
出典
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=10064717&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1 {at}
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