不当行為解決 無償で手助け
悪事の暗躍許さない
視点・キーパーソン
社会問題被害者救済センター代表
村内 光晴さん
「詐欺被害に遭った。被害者の会を立ち上げたい」「ブラック企業で社員が被害を受けている」—。公的機関ではなかなか対応してもらえず、長年解決できなかったという悲痛な声を、被害者からしばしば耳にする。悪事の暗躍は許さない。被害に遭った一般市民に寄り添うボランティア活動を続け、問題解決を目指したい。
昨年10月、弱者に対する犯罪や不当行為を、弁護士とともに法的手段を用いながら解決を目指すボランティア団体「社会問題被害者救済センター」(本部・福井市)を立ち上げた。弁護士法の趣旨にのっとり、センターが被害者の代理人として法的手段を行使することはない。人づてやホームぺージを通して相談が寄せられている。
2014年に発覚した旧武生信用金庫の不正融資問題では、会員代表訴訟の訴訟団長に就いた。訴訟の発起人から悲痛な思いが寄せられたのがきっかけで、「地域の混乱を避けたい。地域企業や顧客を守りたい」という純粋な思いに心を動かされた。発起人は高齢で「長期間の裁判や過酷な圧力に耐えきれる自信が無い」という状況もあった。
日本刀の業務上横領容疑などで福井市の刀剣販売・修理会社の男が逮捕された事件では昨年9月、「被害者の会」を発足させ、事務局長を務めている。被害者は全国に多数いる。「毎晩眠れない」などと苦しみにあえぐ数々の声を聞いた。集団訴訟には10府県15人が提訴。一人でも多くの人を救いたい。
被害者救済活動の原点は会社に勤めていた25歳のころ。市民派として知られた故吉川嘉和弁護士と出会い、夜に被害者の声を伝える訴訟の陳述書をボランティアで作成するなどして手伝った。依頼者と弁護士の橋渡し役だったが、損得抜きに正義を追求する吉川弁護士の姿勢に感銘を受けた。「困窮している人の心をつかみ、ともに歩くことが大切」と言われた言葉が今も脳裏に刻まれている。
会社勤めでは両立は難しい。被害者救済に力を入れようと28歳のとき、仕事を独立させた。現在まで寄せられた相談は幅広い。未成年者のいじめ、高齢者の遺産相続、医療ミス…。「親や兄弟が心配するから家族には言えない」「民生委員に相談したが解決に至らなかった」などの声も聞く。
解決する上で重要なのは時間の短縮だ。誰しも悩みを長い間、抱え込んでおきたくはない。被害者の声を聞いて自分が陳述書の作成を手伝い、弁護士につなげばスムーズに進む。
あらゆる不当な問題を監視し、被害者とともに立ち向かう。被害者の絶望的な思いを埋没させないことが重要だ。
むらうち・みつはる 旧武生信用金庫不正融資問題では会員代表訴訟団団長を務める。福井市の業者による刀剣横領事件では「被害者の会」事務局長。2016年10月にボランティア団体「社会問題被害者救済センター」(本部・福井市)を立ち上げた。耐震補強の会社を経営。福井市在住、49歳。
出典
『福井新聞』2017年02月16日、3面